薬剤師が取得することができる感染領域の認定にはいくつかありますが、感染制御認定薬剤師と抗菌化学療法認定薬剤師は多くの薬剤師が取得を目指す認定です。
しかし、感染制御認定薬剤師と抗菌化学療法認定薬剤師、似たような名前だけどどこが違うのかわからない方も多いと思います。
今回は、感染制御認定薬剤師である私が、よくみなさんが疑問に思う、感染制御認定薬剤師と抗菌化学療法認定薬剤師の取得方法や難易度等の違いを解説していきます。
- 学会の違い
- 早く取得できるのは?
- ICTに所属しなくても取得できるのは?
- “専門薬剤師”を目指すなら?
- 取得難易度
- 取得にかかる費用
このような疑問を解決していきます。
大学生でもわかる内容でまとめていきます。ぜひ参考にしてみてください。
学会の違い
まずは学会の違いです。感染制御認定薬剤師と抗菌化学療法認定薬剤師は似たような名前であるため混同しがちですが、実は認定している学会が異なります。
感染制御認定薬剤師 | 抗菌化学療法認定薬剤師 |
---|---|
日本病院薬剤師会 | 日本化学療法学会 |
感染制御認定薬剤師は日本病院薬剤師会、抗菌化学療法認定薬剤師は日本化学療法学会です。
英語の資格で例えると英検とTOEICのような、同じ分野の認定でも認定している組織が異なります。
日本病院薬剤師会は病院薬剤師であればほとんどの人が加入する学会です。病院の薬剤部単位で加入している人も多いでしょう。
一方で、日本化学療法学会は感染症に特化した学会であり、一般的には各自で加入する学会です。そのため、病院薬剤師でも入っていない方のほうが多いと思います。
ICTで活動したい、感染症が好きという方は入っておいたほうが良いです。
早く取得できるのは感染制御認定薬剤師
取得に必要な年数(最短年数)は感染制御認定薬剤師の方が短いです。
感染制御認定薬剤師 | 抗菌化学療法認定薬剤師 |
---|---|
3年半(4年目10月~) | 6年(7年目4月~) |
感染制御認定薬剤師は3年半、抗菌化学療法認定薬剤師は6年が必要です。
感染制御認定薬剤師は以下の要件があります。
- 実務経験3年
- 日病薬病院薬学認定薬剤師であること(取得に3年間の実務経験が必要)
- チームと連携した活動が3年間必要
これを全て最短で満たすと、4年目の春~夏に認定試験および認定申請をして、合格すれば10月から認定です。
一方、抗菌化学療法認定薬剤師は以下の要件があります。
- 薬剤師として抗菌化学療法に5年以上関わっていること
こちらはシンプルです。単純に申請するためには5年間の経験が必要という事です。
最短では、6年目の9月までに認定申請を行い冬に試験を受け、合格すると7年目の春から認定です。
チームに所属しなくても取得できるのは抗菌化学療法認定薬剤師
上でも少し触れましたが、ICTやASTのチームでの活動の有無も認定要件になっています。
感染制御認定薬剤師 | 抗菌化学療法認定薬剤師 |
---|---|
3年以上(認定時に引き続き1年以上) | なし |
感染制御認定薬剤師は仕事上で院内の感染制御や抗菌薬適正使用に関することを任されていないと取得できないことがわかります。自分だけではどうしようもない部分。。
抗菌化学療法認定薬剤師はチームでの活動が要件になっていないので、感染症や抗菌薬の適正使用に関して「専門的な仕事はしていないけど認定資格が欲しい」という方に向いています。
“専門薬剤師”を目指すなら感染制御認定薬剤師
2023年現在、感染症領域で“専門薬剤師”になりたいのであれば感染制御認定薬剤師を取る必要があります。
感染症領域の専門薬剤師は、感染制御専門薬剤師のみです。
感染制御認定薬剤師になっていることが条件で、論文や学会発表などが認定要件になっています。
抗菌化学療法認定薬剤師になっても、感染症領域の専門薬剤師の取得はできません。
取得は難しいのか
私が感染制御認定薬剤師のみ取得していることを前提としていますが、取得難易度は、どちらも同程度であると認識しています。ただし上にも記載しましたが、チームでの活動が条件になる感染制御認定薬剤師の方が業務上厳しくなる可能性があります。
認定取得までに必要な事として、どちらの認定も認定試験と介入事例の提出が必要です。
参考までに感染制御認定薬剤師の認定試験の合格率は70~80%程度です。しっかり勉強すればほとんどの人が合格します。
抗菌化学療法認定薬剤師に関しても、難関認定であるといった情報は特になく、病院内でも取得している薬剤師が多くいる認定の一つです。
介入事例に関しても15~20例が必要ですが、抗菌薬に関する基本的な介入がしっかりできていれば大丈夫です。
どちらもコツコツ勉強して積極的に介入していけば多くの人が認定を取得することができる資格です。
ちなみに取得にかかる費用(感染制御認定薬剤師)
認定薬剤師を取得するにも費用が掛かります。
私は感染制御認定薬剤師であるため、参考程度に2022年度の感染制御認定薬剤師取得にかかった費用を紹介します。
項目 | 費用 |
---|---|
講習会4回(必要単位取得のため) | 40,000円 (10,000円×4回) |
認定試験料 | 11,000円 |
認定審査料 | 11,000円 |
認定料 | 22,000円 |
合計 | 84,000円 |
結構かかります。施設での認定取得に際しての補助や認定後の手当がある場合があるので確認してみましょう。
まとめ
一覧表にしてまとめていますので確認してください。
感染制御認定薬剤師 | 抗菌化学療法認定薬剤師 | |
---|---|---|
学会 | 日本病院薬剤師会 | 日本化学療法学会 |
最短の取得にかかる期間 | 3年半 | 6年 |
ICTやASTでの活動 | 3年以上(認定時引き続き1年以上) | 要件なし |
専門薬剤師の制度 | 制度あり | 制度なし |
認定要件等の詳細は、各学会のホームページで確認してください。
頑張って認定薬剤師を目指しましょう。応援します。
「感染症をこれから勉強を始めようと思っている」
そんな方は以下の記事に最適なテキストを3冊紹介しています。抗菌薬初心者脱却の第一歩を踏み出しましょう!