薬剤師が取得できる感染系の資格と言えば
感染制御認定薬剤師や感染制御専門薬剤師
を思い浮かべる方が多いかもしれません。
これらは、日本病院薬剤師会という学会が認定している資格で、
最もメジャーな薬剤師の認定資格の一つです。
日本病院薬剤師会は病院薬剤師ならほとんどの人が入っている学会です。
そのため、認定者も多く、この認定を持っている薬剤師が複数いる病院も珍しくはないと思います。
しかし、薬剤師が取得できる感染系の認定はこれらだけではありません。
実はほかにもいくつかあります。
この記事ではそれらの認定を含め、薬剤師が取得できる感染系の認定ついて、認定要件をまとめていきます。
結論は5種類
さっそく結論です。
薬剤師が取得できる感染系の認定資格は5種類あります。(2022年5月時点)
- 感染制御認定薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
- 抗菌化学療法認定薬剤師
- 外来抗感染症薬認定薬剤師
- インフェクションコントロールドクター(ICD)
学会ごとに分けて見ていきましょう。
日本病院薬剤師会
日本病院薬剤師会が認定している感染系の資格には、
- 感染制御認定薬剤師
- 感染制御専門薬剤師
以上があります。
それぞれ認定要件をまとめていきます。
感染制御認定薬剤師
- 病院薬剤師
1.感染制御認定薬剤師認定申請資格
日本病院薬剤師会
以下の全てを満たす者は認定を申請することができる。
(1)日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。
(2)薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。た
だし、別に定める団体のいずれかの会員であればこれを満たす。
(3)別に定める学会のいずれかの会員であること。
(4)日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度
により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。
(5)申請時において、病院または診療所に勤務し、施設内において、感染制御活動(院
内感染防止対策委員会、院内感染対策チーム、抗菌薬適正使用支援チーム(以下、
委員会・チーム)の一員、委員会・チームと連携した活動、あるいは他施設の委員
会・チームと連携した活動など)に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上
従事していること(所属長の証明が必要)。
(6)施設内において、感染制御に貢献した業務内容及び薬剤師としての薬学的介入によ
り実施した対策の内容を20例以上報告できること。
(7)日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、及び別に定める学会が主催す
る感染制御領域の講習会などを所定の単位(20時間、10単位)以上履修してい
ること。
ただし、日本病院薬剤師会主催の感染制御に関する講習会を1回以上受講している
こと。
(8)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(9)日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師認定試験に合格していること。
- (極論)1年目からICTに属していれば最短で4年目に取得可能
- 病院薬剤師が目指す感染系の認定の代表格
- 日本病院薬剤師会が主催する感染制御専門薬剤師講習会を受講する必要がある
2022年度、5年目の筆者は感染制御認定薬剤師認定試験を受験しました。
感染制御専門薬剤師
- 病院薬剤師
1.感染制御専門薬剤師認定申請資格
日本病院薬剤師会
以下の全てを満たす者は認定を申請することができる。
(1)申請時において、感染制御認定薬剤師の資格を有している者であり、かつ、ICD
制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの会員であること。
(2)日本医療薬学会、日本薬学会、日本臨床薬理学会、日本TDM学会、ICD制度協
議会に加盟している学会・研究会、日本薬剤師会学術大会、関連する国際学会ある
いは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において感染制御領域に関する学会発表が
2回以上(うち、少なくとも1回は発表者)、複数査読制のある国際的あるいは全国
的な学会誌・学術雑誌に感染制御領域に関する学術論文が1編以上(うち、少なく
とも1編は筆頭著者)の全てを満たしていること。
(3)病院長あるいは施設長等の推薦があること。
(4)日本病院薬剤師会が行う感染制御専門薬剤師認定試験に合格していること。
- 学会発表、論文投稿が必須となる
- 感染制御認定薬剤師を取得した後に取れる資格
- 年数の明記はされていないため、感染制御認定薬剤師を取った年度で連続して取得することも可能と思われる
日本化学療法学会
日本化学療法学会が認定している感染系の資格には、
- 抗菌化学療法認定薬剤師
- 外来抗感染症薬認定薬剤師
以上があります。
それぞれ認定要件をまとめていきます。
抗菌化学療法認定薬剤師
- 病院薬剤師
- 調剤薬局等の薬剤師
抗菌化学療法認定薬剤師の申請は下記の各項を満たす者とする。
日本化学療法学会
1.本邦における薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格及び抗菌化学療法の見識を備えている。
2.申請時に、薬剤師として抗菌化学療法に5年以上かかわっていることを示す所属する施設長又は感染対策委員長の証明が得られる。
3.申請時において、本学会の正会員である。
4.医療機関において、薬剤管理指導・TDM(治療薬物モニタリング)・DI(医薬品情報)などの業務を通じて感染症患者の治療(処方設計支援を含む)に自ら参加した15例以上の症例を報告できる。
5.本学会の抗菌薬適正使用生涯教育セミナー・認定委員会の指定する研修プログラムなどにおいて、別に定める単位数を取得している。
- 5年以上の実務経験が必要なので、最短でも6年目に取得可能
- 症例は日病薬と比較しても少ないため、比較的取得しやすい傾向。(認定者が多い)
- 学会入会は遅くても認定申請時でOK(※業務を行う上では入っておいたほうが良い)
外来抗感染症薬認定薬剤師
- 病院薬剤師
- 調剤薬局等の薬剤師
外来抗感染症薬認定薬剤師の申請は下記の各項を満たす者とする。
日本化学療法学会
1.本邦における薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた人格及び感染症化学療法の見識を備えている。
2.申請時に、薬剤師として抗感染症薬の外来調剤と服薬指導等の実務経験が3年以上有することを示す、所属施設長の証明が得られる。
3.申請時において、本学会の正会員である。
4.抗感染症薬の外来調剤および服薬指導、疑義照会(処方介入)等、自ら関与した15例以上の症例(在宅における3症例、疑義照会による処方介入3症例を必ず含む)を報告できる。
5.本学会の主催する学術集会への参加および指定されるプログラムや認定委員会が指定する各地域の研修プログラムなどにおいて、申請時から遡って3年以内に必要な単位数を30単位以上取得している。
- 調剤薬局等の薬剤師が目指せる資格
- 最短で4年目に取得可能
- 外来調剤での症例報告が必要なため、院外処方を出している病院は難しいかも
ICD制度協議会
ICD制度協議会が認定している感染系の資格には、
インフェクションコントロールドクター(ICD)
以上があります。
前提として、まずはICD制度協議会とは何かについて説明していきます。
ICD制度協議会とは?
簡単に言うと、
ICDを認定することができる学会
のことです。
ICD制度協議会に加盟している学会は2022年現在で29学会あります。
つまりICDは、一つの学会が認定している資格ではなく、
ICD制度協議会に加盟している29学会ならどの学会に加入していても取得することができる資格です。
以下、全29学会です。薬剤師が加盟しやすいのは日本化学療法学会などです。
日本病院薬剤師会は含まれないので注意
日本医真菌学会(MM) |
日本ウイルス学会(VI) |
日本化学療法学会(CT) |
日本環境感染学会(EI) |
日本眼感染症学会(OI) |
日本感染症学会(ID) |
日本寄生虫学会(PA) |
日本救急医学会(AM) |
日本外科感染症学会(SI) |
日本結核・非結核性抗酸菌症学会(TB) (旧 日本結核病学会) |
日本口腔感染症学会(OD) |
日本口腔ケア学会(OC) |
日本呼吸器学会(JR) |
日本骨・関節感染症学会(BJ) |
日本細菌学会(BI) |
日本歯科薬物療法学会(OP) |
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会(OT) (旧 日本耳鼻咽喉科感染症・エアロゾル学会) |
日本集中治療医学会(CC) |
日本小児感染症学会(PI) |
日本神経感染症学会(NI) |
日本性感染症学会(ST) |
日本病院総合診療医学会(HG) |
日本ペインクリニック学会(PC) |
日本麻酔科学会(JA) |
日本有病者歯科医療学会(MC) |
日本リウマチ学会(RH) |
日本臨床寄生虫学会(CP) |
日本臨床検査医学会(LM) |
日本臨床微生物学会(CM) |
インフェクションコントロールドクター(ICD)
- 薬剤師
- 医師
- 臨床検査技師
次の3条件を全て満たす場合、ICDに応募できるものとする。
日本化学療法学会
1.このICD制度協議会に加盟しているいずれかの学会の会員であること(会員歴の長さは問わない)。
2.医師歴が5年以上の医師または博士号取得後5年以上のPhDで、病院感染対策に係わる活動実績があり、所属施設長の推薦があること。
3.所属学会からの推薦があること。
- 薬剤師にとって、今ある感染系の認定の中では最難関
- PhD=博士号を取得して5年経過する必要があり、そこが最も難関である