「アプリって、プログラマーが作るものだよね?」
そう思っている薬剤師の方、多いんじゃないでしょうか。
僕もずっとそう思っていました。
でも今、僕の手元には自分で作ったアプリがあり、実際に職場で使っています。
僕は病院薬剤師で、ICT・AST(抗菌薬適正使用支援チーム)の活動をしています。
プログラミングはほぼ未経験。コードの構造も正直よくわかっていない。
それでも作れました。
今回はその話を正直に書いていきます。「どうすればいいかわからなくて止まっている」という方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
なぜアプリを作ろうと思ったのか
AST活動において欠かせないのが抗菌薬の投与設計です。
これまでは、Excelのマクロを使ってモンテカルロシミュレーションを行い、PK/PDに基づいた投与設計をしていました。
世の中にはそういったファイルが公開されているので、それを使わせてもらっていたのですが、正直なところ、
- 操作が複雑で、初めて触る人には難しく見える
- 機能がモンテカルロシミュレーションのみで、他の情報を別々に参照しなければならない
という課題を感じていました。
そこで思ったんです。
「一つのアプリで全部できたら便利じゃないか」 と。
具体的には、こういう機能を1つにまとめたかった。
- モンテカルロシミュレーション(PK/PDを使って「この投与量で目標を達成できる確率」を計算する手法)
- 腎機能に応じた投与量調整
- CLSIブレイクポイント(感受性の判断基準)
- 当院オリジナルのアンチバイオグラム(薬剤感受性率に加え、MIC50・MIC90も掲載した独自仕様)
これが一画面でわかる、視覚的に使いやすいWebアプリです。
コロナ禍のちょっとした経験が、のちに活きた
アプリ開発に踏み切ったきっかけには、もう一つ背景があります。
コロナ禍、外に出られない時期がありましたよね。
あの時、「家でできることを何かやってみよう」と思って、HTML・CSS・Pythonを1ヶ月ほど独学しました。
たいして身につかなかったし(笑)、コードをちらっと見たことがある程度です。
でも、これが後々活きることになります。
AIを使って開発する際、コードを全部理解する必要はありません。ただ「こういうものだ」という感覚があると、AIとのやり取りがスムーズになります。
プログラミングを少し触ったことがある、それだけで十分でした。
AIを「コンサルタント」と「エンジニア」に分けた

開発に使ったのはGeminiとClaude、どちらもブラウザ版です。いわゆる普通のやつです。
それぞれに役割を持たせました。
Gemini → コンサルタント役
Geminiは対話と推論が得意です。
- 「どういう設計にするか」「どんなUIにするか」という相談
- 僕が頭の中でぼんやり考えていることを言語化してくれる
- Claudeへの指示書(プロンプト)を作成してもらう
この最後の役割が特に大きかったです。
AIにコードを書いてもらうには、的確な指示が必要です。でも、その指示をうまく書くのが難しい。そこで「Geminiにプロンプトを作ってもらい、それをClaudeに渡す」という方法にしました。
Claude → エンジニア役
Claudeは受け取った指示書をもとに、実際のコードを書いてくれます。
最初にアプリの骨格を作ってもらった時、ほぼ一発でほぼ完成レベルのコードが出てきました。
修正が必要な時も同じフローです。コードをClaudeに貼り付け、Geminiに修正プロンプトを作ってもらい、再びClaudeに投げる。
これを繰り返すことでアプリが育っていきました。
実際どれくらいで作れた?
コアとなるアプリの骨格は、10時間もかかりませんでした。
「60点以上、実際に使えるレベル」にはそのくらいの時間で到達できます。
その後、院内オリジナルの感受性データや必要なデータベースの追加、細かい機能の追加など、ブラッシュアップを重ねて今の状態になるまでは約1ヶ月半かかりました。
ただ、これからも日常的に修正とブラッシュアップは重ねていく予定です。もちろんAIを使って。
コードを書くのはAIがやってくれるので、思ったよりずっと早い。
「コード」生成は簡単だけど、その先が少し難しい

正直に言います。
コードを書くこと自体は、そんなに苦労しませんでした。
AIが書いてくれるので。
一番時間がかかったのは、Webアプリとして運用(デプロイ)するためのGitHub・Vercelの設定です。
コード生成とは全く別の世界で、今まで触ったことがない領域でした。AIに聞きながら進めましたが、ここは少し時間がかかりました。
完成したアプリはReactで作られたWebアプリで、グラフも表示されます。
「コードを書くのは難しくない。実際に使えるようにする工程に時間がかかる」
これが正直な感想です。
薬剤師の専門スキルのベースアップを。

完成したアプリを同僚に見せたとき、ありがたいことに使いやすいと言っていただきました。
視覚的に整理されていて直感的に使えるので好評です。
今はまだ、ASTメンバーや抗菌薬に関心のある薬剤師数名で使っている段階です。
でも、このアプリが目指すのはその先にあります。
これまでPK/PDの計算やモンテカルロシミュレーションは、ASTチームのような専門スタッフが担ってきました。一般の病棟薬剤師にとっては、ASTのカルテ記載を見ても「なんとなくわかるけど、よくわからない」という感覚だったと思います。
このアプリが普及すれば、病棟薬剤師も抗菌薬投与設計を「自分ごと」として関われるようになる。
そんな可能性を感じています。
📌 補足:無料版でも作れる?(Claude・Gemini 料金比較)
「有料版じゃないとダメなの?」という疑問があると思うので、現時点(2026年3月)での比較をまとめます。
| 無料版 | 有料版(約3,000円/月) | |
|---|---|---|
| Claude | Sonnet(中位モデル)、メッセージ数制限あり | Opus(最上位モデル)、5倍の使用量 |
| Gemini | Gemini 2.5 Flash、コンテキスト32K | 高性能モデル、コンテキスト100万tokens |
無料版でもコード生成や相談はある程度できます。
ただし、長い開発セッションを続けると制限に当たりやすいのが正直なところ。僕は両方の有料版を使っていましたが、合計月額約6,000円でした。
「まずは無料版で試してみる」というアプローチは全然ありだと思います。
まとめ:薬剤師でも、アプリは作れる
- プログラミング未経験でも、AIを使えばアプリは作れます
- 「Geminiをコンサルタント、Claudeをエンジニア」に役割を分けると効率的
- コードを書くより、デプロイ(使えるようにする工程)のほうが時間がかかるかもしれない
- コアとなる骨格は10時間以内で完成。1ヶ月半で本格運用レベルに
- 少しでもプログラミングに触れた経験があれば、それは十分活かせる
「どうすればいいかわからないから、できない」という方にこそ読んでほしい記事でした。
壁は、思っているより低いです。
あなたが「あったらいいな」と思っているアプリ、AIと一緒に作ってみませんか?
