【5ステップ】薬剤師の学会発表をしてみよう

薬剤師のみなさんは学会発表をしたことがあるでしょうか。

学会発表と一言で言うと、

なんか難しそうだしつまらなそう

意識高い系のやる事じゃないの?

そんなイメージを持つ方もいるでしょう。

皆さんの中には、

  • 自分が頑張ったことを世の中に発表したい
  • 認定や専門薬剤師取得のためにやらなければならない
  • 上司や先輩の密かなプレッシャー

このような理由でこれから学会発表にチャレンジする方も多いと思います。

この記事では、以下のような悩みを解決します。

  • 学会発表がしてみたいけど何からやればいいのかわからない
  • 先輩から学会発表を勧められたけどどうしよう
  • 学会発表をしてどんなメリットがあるの?

結論、学会発表は多くの薬剤師にとってメリットがたくさんあり、楽しいものです。

私は薬剤師4年目で初めて学会発表を“させられ”ましたが、それがきっかけで発表や研究が楽しくなり、初めて学会発表をした2年後には学会の優秀演題候補に選出される演題を発表することができています。

この記事を参考にしてさっそく次の学会にエントリーしてみましょう。

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そもそもなぜ学会発表をするの?

認定や専門を取るため

薬剤師が取得できる認定や専門資格には様々なものがありますが、資格によっては学会発表の回数が取得要件の一つになっていることがあります。

私の目指している感染制御専門薬剤師も学会発表が要件に含まれています。

自分の業績にするため

学会発表をすればもちろん自分の業績になります。

学会発表をすることによって、将来の自分が過去を振り返ったときに、自分がどんなことに興味を持って取り組んでいたのか、どれだけ努力してきたのかが目に見える形となります。

それは必ずしも直接的に給料に反映されるものではないかもしれませんが、薬剤師としての信頼度を高めたり、自分の仕事の幅を広げることができるかもしれません。

今の時代は様々なルートで仕事が舞い込んでくることもあります。

自己投資として業績を増やしていくことが重要だと考えます。

自分の活動を世の中に共有するため

学会発表は自分がこれまでに取り組んできたことや臨床研究を世の中に共有する機会になります。

それは、他の多くの人にとっては新鮮な考えや結果であり、それが最終的に医療の発展につながります。

臨床現場の薬剤師は皆同じような悩みを抱えることが多いです。

なぜなら医療は人体を扱っているため、創意工夫の余地が少なく、基本的にはすでに明らかになっているエビデンスをベースとしています。よって、その範疇(はんちゅう)を超えた場合に対応に困るわけです。

また、診療報酬という皆同じルールのもとで収益を得る医療業界の仕組みも、多くの人が同じような悩みを抱える要因の一つになります。

以上のように特殊な業界である臨床現場の薬剤師の取り組みは、ほんの些細な症例報告や業務改善などでも世の中に共有する価値はあるのです。

人との繋がりを作るため

学会発表をすると人との繋がりができます。

ポスター発表をすれば自分の発表に対して質問をしてくれる先生がいます。その先生とは名刺を交換して、さらにメールなどでのやり取りをすれば新たな人脈になります。

特に自分の発表に興味を持ってくれる人は自分と同じ環境や悩みを抱えている人が多いです。

そのため、話も合いますし、その繋がりから有益な情報を得ることも可能です。

いつも職場で関わる同じ人たちとは違った刺激がもらえますし、新たな考え方を知ることができることで仕事のモチベーションにもつながります。

学会発表のメリットデメリット

学会発表のメリットとデメリットを簡単にまとめます。

メリット

  • 自分の業績になる
  • 認定、専門薬剤師の取得要件を満たせる
  • 人との繋がりができる
  • 人として成長できる
  • 論理的に物事を考えることができるようになる
  • 資料作成やExcelのスキルが身につく
  • 全国各地に旅ができる
  • 旧友や以前の仲間と会える
  • 仕事が楽しくなる(自分がやっていることを発表すると、他の人がどうやっているのか注目するようになる)

デメリット

  • 時間がかかる
    • 特に最初は試行錯誤しながらなのでとても時間がかかる
    • 時間外労働はつかないことの方が多い
  • 興味を持たないと苦痛になる
  • 出費がかさむ(所属施設の福利厚生による)

発表の種類

開催される学会

学会発表をこれからする方は、どこですればいいのか悩んでいる方もいると思います。

結論として、学会発表は各学会の学術集会などで行います。

たとえば、薬剤師が関連する学会であれば以下が挙げられます。

  • 日本病院薬剤師会
  • 日本医療薬学会
  • 日本化学療法学会  など…

まずはこういった学会に加入し、年に1回〜数回行われる学術集会に参加して自分の発表を行いましょう。

主に口頭発表、ポスター発表の2種類

学会発表とはいってもどんな形で発表するのかイメージがつきづらい方もいると思います。

発表の種類は大きく2種類に分かれます。

  • 口頭発表
  • ポスター発表

です。

口頭発表はその名の通り口頭での発表になります。発表者がスライドを示しながら聴衆に向けて発表する形式です。これはイメージしやすい方が多いと思います。

一方でポスター発表は、自分で作成したポスターを所定の掲示スペースに貼ります。学会の開催期間中は常に貼られていることが多いです。また、ポスターの発表時間(質疑応答の時間)が決められていて、その時間の間、発表者はポスターの前に立ち、随時閲覧に来た参加者の質疑に対応する必要があります。時間は大体1時間程度のことが多いです。

選べるなら口頭発表がおすすめ

発表の形式が自分で選べるなら私は断然口頭発表がおすすめです。

理由は以下の通りです。

  • その場で必ず反応が得られる
  • 影響力が大きくなる
  • ポスターの作成が面倒

まずは参加者からの反応についてです。

ポスター発表は上に書いたように随時参加者の質問が来たときに答える形式です。そのため、参加者の目に留まらなければ質問が来ないという事もあります。

対して口頭発表ではほとんどの場合質問が来ます。皆その場で集中して発表を聞くからです。

質問なんて来てほしくないなあ。

そんなことを思う方もいると思います。

でも考えてみてください。1年間以上頑張って取り組んできた自分の発表に対して何も反応がないというのは寂しくないですか。頑張って作成したポスターも貼るだけで1時間立っているだけ。これは結構ショックです。(私もポスター発表の寂しい経験があります)

次に影響力です。

口頭発表の方が断然影響力が大きくなります。

これは想像しやすいですが、口頭発表は何人もいる人の前で発表します。顔も発表方法も声質もスライドの特徴も研究の内容も質疑応答の仕方もすべて見られます。

少しドキドキするかもしれませんが、だからこそ影響力が大きいのです。

実際に口頭発表をして聴衆の方から発表後にあいさつされることも多いです。聞いている側の目線では、口頭発表をしていた方の印象は結構残るものです。それで新たなつながりができるとさらに薬剤師という仕事が楽しくなることは間違いありません。

最後にポスターは作成が面倒であるという事です。

特に1枚刷りのポスターにする時は厄介です。配置やデザインなど考えることがとても多いです。

また、私的にはこれが一番のストレスポイントですが、1枚刷りのポスターはデータ容量が大きくなります。したがってそれなりのメモリ(16GB 以上)を搭載したPCでないとうまく動かなくなります。

印刷も特別な機械で印刷しなければならないし、持ち運びも大きくてしづらい。あまりいいことがありません。。

学会発表をするまでの5ステップ

発表する内容を考える

まずは発表する内容を考えましょう。

どのくらい前から準備すればよいのか悩むと思いますが、筆者としては学会が開催される1年半前くらいには案を考えておくのが良いと思っています。

ただ、症例報告や研究報告など発表の仕方によって準備期間が変わってくるので一概には言えません。特に研究を報告する場合は準備期間を長めに取っておくのが良いです。

発表する内容はどのようにして考えればいいのかわからない方も多いと思います。

一言で表現すれば

何かと何かを比較する

これがキーワードです。

たとえば、

  • 薬剤師に対する勉強会の実施の前後で意識や行動に変化があったか?
  • 薬剤師の新たな取り組みの前後で臨床効果や医療者の行動に変化があったか?
  • A薬を使用した群と使用していない群で効果や副作用の違いがあるか?

まずはこんな疑問を日常の業務の中から探して内容を考えてみましょう。

院内の倫理委員会に研究計画書などを提出する(必要な場合)

倫理審査・研究計画書類作成→委員会に提出→受理(承認番号の受け取り)

発表する内容によって異なりますが、発表することを院内の倫理委員会に提出する必要がある場合があります。

特に電子カルテを用いて情報を入手する場合はほとんど倫理審査が必要になります。

また、臨床研究や基礎研究をする場合は研究計画書も併せて提出しなくてはなりません。

詳細は所属する施設の担当者に確認してみてください。

学会が開催される1年前くらいには済ませましょう。

多くの施設では毎月倫理委員会を実施していますが、提出したらすぐに審査されるのではなく、提出から審査まで2か月くらいかかるなど、想像以上に先になってしまうことがあるので注意です。

倫理審査委員会に研究計画書が受理されると、「承認番号」という番号が与えられます。とても重要な番号なので必ず控えておきましょう。

研究計画書を書く段階で挫折しそうになることがありますが、いい経験だと思って頑張ってみてください。

筆者本人も当時は研究計画書を書くのがとても億劫でしたが、数回提出しているとだんだん慣れてきました。

研究、調査をする

データ収集→統計解析→考察

倫理審査委員会に研究計画が受理されたら研究のスタートです。

研究を計画している段階で集めるデータの詳細などは決めているので、それに則ってデータを収集します。

収集したら次は統計解析です。

臨床研究は、簡単に言えば何かと何かを比較することをしています。

さまざまな統計手法を使って比較をしてみましょう。

どんな統計手法を使えばいいのかわからない方も多いと思います。

最近では生成AIに研究内容を質問するとどんな統計手法が合理的かを判断してくれます。

統計はとても億劫に感じてしまう方も多いと思いますが、まずは簡単にできる方法としてChatGPTなどの生成AIに質問してみましょう。

統計解析をすると結果がでます。差があったのか?それとも差がなかったのか?その結果を踏まえてどんなことが言えるのかを考察してみましょう。

ここまでくれば内容に関しては準備完了です。

学会発表の1年から半年前には終わっていることが理想です。

発表したい学会にエントリーする

研究の結果がそろったら学会に演題登録(エントリー)します。

だいたい学会が開催される半年くらい前に始まることが多いです。

たとえば日本医療薬学会の年会は、年に1回11月あたりに開催されますが、4月~5月くらいに演題登録(エントリー)をするようになっています。

自分が発表したい学会のホームページやメールをよく確認して注視しましょう。

演題登録とは何をするのかわからないと思う方も多いと思います。

簡単に言うと演題登録とは、

発表者と要旨を登録すること

です。

一般的には発表者と要旨を専用のフォームに入力してオンラインで登録します。

演題登録も初めて行うときは戸惑うかもしれません。

でも1回やってしまえばほとんどどの学会も同じような形式での演題登録なのでできるようになります。

少し頑張ってみましょう。

資料を作る

演題登録が終われば後は本番に向けた資料作りです。

口頭発表でもポスター発表でも使用するソフトは一般的にMicrosoftのPowerPointです。

自分の研究をまとめてみましょう。まとめ方や形式は学会ごとに異なります。

発表者の規定や要項をよく確認して作成してください。

特にPowerPointの縦横比率やフォントには注意です。

本番

準備ができればあとは本番に向かいます。

  • ポスター発表の方は本番までにポスターの印刷
  • 口頭発表の方は学会の要項に合わせてデータの準備

以上を行ってください。

ポスターの印刷はA1サイズの1枚刷りでいわゆる「ポスター」の形でも良いですし、パワーポイントをA4で1スライドずつ印刷して並べて掲示しても良いです。発表者の中では1枚刷りの方が割合的に多いですが、どちらでも問題ありません。

(まとめ)学会発表はゲーム感覚で

学会発表は一つ一つの細かいミッションをクリアしていくゲームのような感覚でやると楽しくなっていきます。

もちろん自分が興味を持った領域の発表がやりやすいので、日常で疑問に思ったことを解決する方法を考えて、それを実行し、結果を発表してみましょう。

私も最初は「学会発表とか意識高い系のやることじゃないの」と思っていました。

ただ、一種のゲームだと思ってやり始めたらとても楽しく感じましたし、ゲームをやりつつ現実世界において上記のように多くのメリットや楽しいことがあることを実感しました。ぜひ皆に経験していただきたいと思っています。

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